ASPESI SNAPS / 05
見た目だけではわからない、
ひとの魅力と服の楽しさ。
ASPESI SNAPS — シトウレイ
1969年にイタリア・ミラノにて創業し、“最上級な普段着”をキーワードに上質なデイリーウェアを提案するASPESI(アスペジ)。アートやカルチャーとも積極的に関わりながら、日常に寄り添う服を提案し続けています。そんなASPESIの世界観を、さまざまな分野で活躍する人々のライフスタイルを通して紹介する「ASPESI SNAPS」。
今回登場するのは、ストリートスナップを軸に、街とランウェイの両方からファッションを見つめるフォトグラファー/ジャーナリストのシトウレイさん。撮影を通じて出会う人々の魅力や、自身の装いを楽しむ発想、そして袖を通して感じたASPESIの魅力について語っていただきました。
PROFILE
シトウレイ
加賀生まれ、東京在住。早稲田大学卒業。ストリートスタイルフォトグラファー/ジャーナリスト。『何を着るか、ではなく、どう着るか』をモットーに、毎シーズン世界各国のコレクションへと赴き、ランウェイ・オフランウェイ問わず、本人の審美眼に適ったスナップフォトを発信中。
2020年10月、“Style on the Street : From Tokyo and Beyond”をアメリカRizzoli社から世界同時出版。出会った人々から愛されるひととなりがふんだんに散りばめられたYouTube「シトウレイチャンネルNEW!!!」も好評配信中。
新しいことで、まごまごしている状態が好き。
街でストリートスナップを撮ったり、東コレやパリコレでショーを見たり、そこから漂ってきたファッションの動きを文章やセミナーで伝えたり。いまはいろんな仕事をしている私ですが、最初からファッションジャーナリストを目指していたわけではないんです。ひとつやってみたら、次の仕事につながって、気づけばこうなっていた。そもそも写真を撮るようになったのも、いきなりなんです(笑)。
原宿によく通っていた頃、『FRUiTS』の編集長の青木さんから「事務所に来て」と連絡があって。いきなりの呼び出しに、「私、何かしたかな…」と不安な気持ちを抱えたまま事務所へ行ったら、「カメラマンになってほしい」と言われたんです。写真を撮ったこともなかったので、最初は誰かと間違えているのかなと思ったけど、私に「やってほしい」と。それで紙とペンを渡されて、カメラの使い方を書きながら教わったのがはじまりです。
当時はフィルムの時代。だから「そんな簡単にできるの?」って思うかもしれないけど、なにも知らない私より、青木さんのほうがずっとカメラに詳しい。そのひとができると言ってくれているのに、私が「できません」と決めるのも違うなと思ったんですよね。それなら、まず頑張ってみようかなと。
実は私、新しいことをはじめて、まごまごしている状態が結構好きなんですよ(笑)。慣れていたら1時間でできることに、5〜6時間かかったりする。下手だし、うまくいかないけれど、ルーキーの気分でいられるのも、なんだか楽しい。はじめてだから失敗して当たり前、うまくいったらラッキーくらいの気持ちです。スナップもよく断られるし、何度も落ち込むうちに慣れてくる。撮り続ける中で、「まあ、いっか」と思えるようになりました(笑)。よく明るいって言われますが、そうした経験がいまの自分を形作っているように思います。
写真にはうつらない魅力も伝える。
スナップを撮っていると、服装だけでは伝わらない、そのひとの魅力に出会うことがあります。あるとき、すごくパンクな格好をした男の子の写真を撮っていると、「これからおばあちゃんの家に電球を取り替えに行くんだ」と言ってて。わぁ、いいひとだなって思うじゃないですか(笑)。でも、そうした彼の内面は写真には写らないんですよね。
だから2008年に独立してブログをはじめたときに、写真に文章を添えるようにしたんです。服装に惹かれて声をかけたけれど、話すともっといいところが見えてくる。それをこぼさずに伝えたい。というのがきっかけで、最初はジャーナリズムというより、“そのひとの魅力を伝えるため”というのがはじまりですね。
私がスナップで撮りたいと思うひとは、ふた通りいて。ひとつは、ファッションとしての完成度がすごく高いひと。もうひとつは、服が好きで好きでたまらないんだろうなと感じるひとです。
真冬なのにタンクトップを着て歩いている子がいたら、今日はどうしてもその服を着たかったんだろうなあって思う。帽子をいくつも重ねているひとにも、「そんなにいらないでしょ」ってツッコみたくなるんだけど(笑)、好きな気持ちがあふれすぎてて、バランスが崩れているところも含めてすごくチャーミングなんですよね。
声をかけるときは、「この靴が素敵だと思いました」とか、「その合わせ方が好きです」って、惹かれたところを最初に伝えることを心がけています。相手の時間をいただいて撮らせてもらうから、その数分が楽しかったと思ってもらいたいんです。カメラを向けると緊張するひとも、こちらが笑っていると、いつの間にか笑ってくれる。鏡みたいですよね。いい表情を撮りたいと思っていると、私も自然と笑っているんです。
やってみたら、次の仕事につながっていた。
そうやって街をずっと撮っていると、「流行もわかるでしょう」と声をかけていただいて、記事を書く仕事もはじまりました。パリでもスナップを撮っていたんですが、ショーに入っていくひとを見ていると、自分も中を見たくなって。それで関係各所に連絡して、少しずつランウェイも見せてもらえるようになったんです。
すると今度は、街とランウェイの両方について話すセミナーも頼まれるようになって。やったこともないのに、「できます!」って答えちゃったから、ちゃんと考えなきゃいけなくなった(笑)。
さらにおもしろくなったのは、2020年にオンラインセミナーを自分で主催するようになってから。ファッションと社会の動きを結びつけて考えるようになりました。「ファッションは時代を映す鏡」って、それまでは少し眉唾だと思っていたんですよ。でも、コロナ禍の影響が服にどう表れたかをひもといていくと、本当にそうなんだとわかった。そこから、ファッションジャーナリズムってこんなにおもしろいんだ、と夢中になりました。
楽しくてラクなのが、私の日常着。
いろんなファッションを見て、素敵なひとたちを撮っていると、自分が着たい服の幅も広がります。原宿の子たちからパリのオートクチュールまで、どれもかっこいいし、可愛いし、自分でもトライしてみたくなる。だから私って、ある意味自分らしいスタイルがないんです。
撮らせてもらうひとから、「こんな着方があるんだ」「この色とこの色も合うんだ」と毎回教わるので、同じ服でも別の合わせ方をしたくなる。前とまったく同じスタイリングだと、ちょっと負けた気がするくらいです(笑)。
だから“日常着を買う”っていう感覚が私にはあまりなくて。パリに着ていく服も私にとっては日常着なのかもしれません。ただ、高いヒールや重たいコート、「これどうやって着るの?」って考えちゃうような服は、やっぱりTPOを考えます。ディナーのために2時間着るならいいけれど、朝から晩までは難しいな、と。
私の中では、“普通の服”と、ここぞというときの「飛び道具」。分けるとしたら、そのふたつなのかもしれません(笑)。
クオリティで気分が変わる服。
ファッションで大事なのは着ていて楽しいと思えること。雨の日に外へ出るのがイヤだなと思っていても、好きなワンピースを着れば、「可愛いし、出かけよう」って思える。服って、着るだけで気分が変わるんです。秒速で気持ちを切り替えられるのは、ファッションのすごいところだと思います。
ASPESIの服も、袖を通したときに気分が変わりました。“最高の日常着”だから、見た目はベーシックだけど、着てみると素材のよさや、優しさ、温かさが伝わってくる。デザインで気分を変えてくれる服もありますが、ASPESIはクオリティで変えてくれる服なんだなと。
パッと見て惹かれるだけじゃなくて、袖を通して「あ、いいな」って思える服なんですよね。そういうところに“最高の日常着”というブランドコンセプトを感じます。なんてことない普通の一日でも、上質なものを着ているという感覚が、自分の気持ちを変えてくれるんですよね。
服を着る背景まで、感じられたら。
今回、ASPESIの店舗で展示する写真でも、年代やファッションのジャンルが違うひとたちを撮りたいと思っています。背景にも、東京のいろんな側面を入れたくて。都会的な場所もあれば、少しひなびた場所もありますよね。
ASPESIには、写真や読書会のような文化的な取り組みも、もっとしてほしいと思います。上質な服というだけでなく、その服を着るひとは、どんな写真を見て、どんな本を読んでいるんだろう。そういう背景まで感じられると、だからこの服を着るんだな、と納得できる。今回の写真展も、そんな取り組みのひとつになれるようにがんばりたいですね。
PHOTO EXHIBITION
シトウレイが切り取る、2026年 東京を象徴する9人。
ASPESI 青山店で写真展示を開催
ASPESI TOKYO(アスペジ 青山店)では、ストリートスタイルフォトグラファー/ジャーナリストのシトウレイ氏とASPESIによるフォトエキシビションを、2026年10月30日(金)より11月12日(木)まで開催いたします。
本企画では、シトウ氏が独自の審美眼で選んだ、2026年の東京を象徴する9名を撮影。それぞれの個性やスタイルを通して、ASPESIが提案する「最上級の日常着」の魅力を表現します。会期中は、撮り下ろした写真をASPESI TOKYOの店内に展示いたします。
ファッションと人、そして東京のリアルなスタイルが交差する、シトウ氏とASPESIによる特別な企画をぜひお楽しみください。
- 会期
- 2026年10月30日(金)〜11月12日(木)
- 場所
- ASPESI TOKYO
- 住所
- 東京都港区南青山5-5-4 1F・2F